バード夫と待ち合わせて、大家さんの自宅へ向かうべく、電車に乗り込みました。

バード夫は冷静を装っていますが、長く一緒にいるバードにはいっぱいいっぱいになっていることが分かります。

 「バードは話さなくていいから。俺が話すよ」

恐怖と不安でテンパっているに違いないのに、大黒柱としての務めを果たそうとしてくれるバード夫。

 「そう言ってくれると本当にありがたいけど・・・。でもどういうことを話そうと思っているの?」

 「実はまだ定まっていなくて・・・。でも工事中断は絶対に無理だから、とにかく頭を下げて、許してくれるようにお願いし倒すしかないかなと思ってる・・・。設計したことについて謝るのは、こちらの非を認めることになっちゃうから、しないようにするけどね」


ここで「頭を下げて許してもらう」というスタンスに引っかかりました。バードとしては「塔屋を建てるのはこちらの自由。こちらに非はない」というスタンスになっていたので、「なんで許可をもらう立場なの?」と納得いかない思いがありました。


そのようなことを伝えると、

 「だって、もし相手を刺激して、工事差止め請求を出されたらほんと終わりだよ。住宅ローン減税に間に合わなくなって、400万円がパーになっちゃうんだよ!」
 
 「うーん・・・たぶん、工事差止め請求なんて知識はないと思うよ。歳取った人だし、怒鳴れば相手がいうこときくと思っている古い昭和の親父タイプなんじゃないかなあ」

 「いや、もし弁護士に相談したら、工事差止め請求しましょうと言われるでしょ」

 「うーん、私ネットで調べてきたけど、いくら大家さんが頑張ったって勝ち目ないじゃん。まともな弁護士なら勧めないと思うよ」

 「いや、そんなことはないよ。お金さえもらえればやるっていう弁護士なんていくらでもいるでしょ。日照権が認められるケースもあるっぽいし」

 「調べたけど、それってマンションとか高い建物の場合みたいよ」

 「ほんとに? そんなことないと思うけど。今日調べていたとき、俺見たと思うよ」

 「えー、ほんとに? ・・・やだなあ、心配になってきちゃったじゃん・・・」

・・・

このようなことを、電車の座席にバードが座らせてもらい、バード夫は立っている状態で、向かい合って話し続けていました。「あーもう、周囲の乗客達に事情が丸聞こえだよ。恥ずかしい」と思いつつも、お互い恐怖と不安でいっぱいで、とにかく会話することで気持ちを安定させざるを得ないという状態でした。


-----------------------------------------------------
今回の記事を書くにあたりバード夫にインタビューしたのですが、もう工事は進める以外ないので、あとはとにかく人と人との問題だと思っていたとのこと(≒頭を下げて下げて許してもらう)。あと当時のバードの、楽観的で勝手な思い込みの数々が非常に嫌だったとのこと。。。
-----------------------------------------------------