打合せでの増田さんの発言をすぐには理解できなかったバード夫婦。

実は、その時のバード夫婦は、建築士の世界というものが良く分かっていませんでした。有名な建築家の名など一人も知らなかったような頃(ガウディぐらいは、言われれば分かった程度)。

このような状態でしたので、「バード夫婦邸の設計は増田さんの世界が表現されている」ということなど、まったく気づいていなかったのです。

ショップ店員に「コレなんて素敵だと思いますが」と勧められ、「えー、そう? 私はこっちのデザインの方が良いと思うわ~♪」なんて答えるのと、ほとんど同じ感覚でいました。「増田さんの提案を尊重する」「増田さんの世界観を守る」などという視点がなかったのです。

そもそも建築設計事務所に依頼するようになったのも、プロであるコンサルさんのお勧めするままに、「へー♪ 建築士に設計してもらって、工務店に相見積りを取って、建ててもらう、というフローが良いのねー」と素直に従ったからです。


建築という世界を何一つ知らないまま、コンサルさんから増田さんを紹介され、増田さんの世界観を守るという視点もないまま、あれこれ自分好みに変えさせることを繰り返してしまった。

バード夫が言いました。
「俺たち増田さんのことを、ただの図面書きのような、そういう失礼な扱いをしてきてしまったのでは?」
 
その言葉が投石となり、バードの認識にサーッと水紋が広がってゆきました。

それと同時に、感じたくない・認めたくない気持ちが盛り上がってきました。。。

「だ、だって、私達としても仕方のないことでしょ!?
明確な好みがあるのに我慢するのもおかしいし!?」

バード夫にイライラしながら言い訳をしてしまいました。 


でも・・・


「増田さんはそういうことを全てわかった上で、黙って自分がその負担(工数がかかる・提案をよく否定される)を引き受けることで、これまでやってきてくださったんだ・・・」


素直に、感じたくない・認めたくない気持ちを受け止めました。


「私、なんて申し訳ないことをっ!! 


でも今更仕様を戻す?
いやいや、そんなことをしたら、また余計に工数をかけさせてしまうだけ。
それに建築士に依頼するからって、自分の好みを言ってはいけないわけじゃないよね?
どの程度まで自分の好みにしてもらって、どの程度は提案を守るべきなのか、線引きがわからない!!

 

今後どう増田さんと接したら良いかわからなくなってしまいました。


しかしそれと同時に、コンサルさんへの怒りも出てきました 

そもそもは、私たちに建築士の選定を任せるか、もしくはコンサルさんが複数の建築士を紹介できれば、テイストの合う建築士さんに設計をしてもらえて、このような事態にはならなかったとも考えられるのです。
 
その点への言及は一切なしに、「バード夫婦さんはウルサ過ぎる。もっと増田さんの提案を素直に聞くべき」「そんなんだと、もう次から増田さんは依頼を受けてくれなくなってしまいますよ」などと、バード夫婦にのみ責任と我慢を押し付けていることに、納得がいきませんでした。(複数の建築士を紹介できなかったことを責めているのではなく、姿勢の問題)

まあ、コンサルさんのことは置いておいて、とにかく急に沸き起こった増田さんへの罪悪感には、二人ともひどく苦悩してしまいました 


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保奈美さんとは別格の仕事を要求していた癖に、自分達は保奈美さんと同じ扱いをしてきてしまったのです。ああああ・・・。 
建築士の世界」に興味を持つようになったのは、この事件がきっかけでした。 
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