ごめんなさいね 私見ちゃったの
 あなたの黒い電話帳
 私の家の電話番号が
 男名前で 書いてある

(島津ゆたか「ホテル」)

 
R社で建築条件付きの説明を受けていたバード夫婦。
隣にはSさん。

HOUSECOとあまりに違う家の説明を受け、固まるバードのために、バード夫が、なんとかバードの希望イメージを説明してくれました。

今思うと、建築条件付きの説明を聞きに行っているのに、「建築事務所設計による注文住宅がいい」と話すのは変だとわかりますが、当時はわかりませんでした。

我々が求めているのは、こういう家ではない
 
という趣旨を伝えられた設計部長(太)はキョトンとして、Sさんも何も言わないしで、ちょっと気まずい空気が流れました。

その後どういう話し合いになったのか、すみません、忘れてしまいました。
ただその後、「契約のためにはローン審査を受けなくてはならないので、間取図のたたき台を作る」という流れになりました。

設計部長(太)と別れ、Sさんとバード夫婦の三人でエレベーターを降りました。
 
そして1階についたところで、Sさんが

あっ、すみません(笑)、私、傘を置いてきてしまったようで・・・。すみません、こちらで失礼します(ニッコリ)

と言って、そそくさとR社に戻っていきました。

ピンと来ました。
ああ、R社と話しに行くんだな、と。

もともとこの物件は、仲介業者Y社とデベロッパーR社が懇意にしているからこそ、まだホヤホヤの未公開の段階で話が来たものです。

一見さんのバード夫婦よりも、Y社とR社のつながりは深く長いのです。仲介業者Y社としては、顧客第一と言いながらも、R社も大事にしないといけません。

バード夫婦もオトナですから、そんなことはわかっています。

若く青かった頃だったら、Sさんの紳士で誠実な態度を見て、
私達のためだけに動いてくれる
と勝手に信じていたでしょうけど・・・。

コロコロとした笑顔で好意的に接してくれながら、
 
きっとバード夫婦の世帯年収や予算の情報はR社に筒抜けなんだろうな、

Y社とR社で落としどころが決められて、
 
百戦錬磨のSさんのしなやかな手腕で、
 
「バード夫婦が自ら望んだ・納得した形で」そこに連れてゆかれるんだろうな

と思うと、夜には必ず本妻のもとに帰ってしまう恋人といるような、そんな気持ちになりました。


西新宿定点撮影6
都庁が出現する直前の景観。
西新宿定点撮影」より